【書評】 「マルクス 資本論の哲学」 熊野純彦 (岩波新書)
今回紹介する本は、熊野純彦「マルクス 資本論の哲学」(岩波新書)です。
実は、今年はマルクス生誕200年の年なのです。
マルクスといえば、「共産主義社会」の到来を主張した経済学者というイメージが強く、「資本論」が有名ですね。
果たしてマルクスが主張していたことは共産主義なのか、資本主義に対する批判ではないのか。本著はマルクスが「資本論」で主張していることの背景の思想を検討している本です。
【概要】
・現在の資本制に歴史的理解を与えてくれるマルクスの「資本論」
・マルクスの批判は、経済学的批判ではなく経済学批判
これまで世界革命は1848年と1968年に起こったと考えることが出来るのですが、どちらの際にもマルクスの著作はよく知られたものでした。1848年はマルクスがじかに経験した革命であり。1968年にはマルクスの著作が広く読まれました。
しかし、現在の社会制度が永遠に持続可能ではないとわかりつつある現在では、現在の社会制度である資本制の分析を行ったマルクスは忘れ去られています。
資本制における資本についての考察を行う等、現行の資本制を検討する際に歴史的理解を与えてくれるのが「資本論」であり、生誕200年の今マルクスの思想を見ていくことに価値があるのです。
○マルクスの批判の性格
マルクスの批判は、社会に関する経済学的な批判ではなく、「経済学の批判」なのです。
先日紹介した「経済史」でも紹介いたしましたが、近世のあたりから資本主義制度へと変革が起きており、マルクスの生きた時代も資本主義が社会制度であったわけです。
つまり資本主義という経済学に関しての批判ということで、共産主義を主張していたというわけではないのです。
資本主義という社会制度の批判であり、資本主義を経済学的に批判したわけではないため、広くマルクスの思想は知られる価値があるのです。
【総括】
マルクスの「資本論」の背景に存在する価値は今こそ必要な価値観なのかもしれません。
資本主義に対する価値ある解釈を与えてくれているのが、マルクスの思想なのでしょう。
今回は資本論の哲学ということで、本著でも紹介されている「資本論」に対する細かい解釈に関しては立ち入りませんでした。
資本の動き等に関して、納得感のある解説がされているので、資本論入門としても価値ある本著だと思いますので、社会を知りたい方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか!