通学読書

理系大学院生が読んだ本の感想や気になったことを書きます。(twitter:@booktrain8807)

【書評】 「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」 山口周 (光文社)

今回紹介する本は、山口周「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」(光文社)です。

  

f:id:booktrain:20180907224933j:plain

 

前回MBAクリティカル・シンキングという論理的思考に関する本をご紹介したのに、それが通用しなくなってきているということを紹介します笑

実は今、世界のエリートが「美意識」を学び始めているのです。

本書は、なぜ「美意識」が重要になったのかを紹介しています。

これから必要な要素になると思われるので、ぜひ押さえておきましょう!

以下、本書のご紹介です!

 

【概要】

コモディティ化してきている論理的思考

・判断を効率化・高精度化する「美意識」

・美意識を鍛えるために学ぶ「アート」

 

 

○論理的思考の限界

前回、MBAクリティカル・シンキングという本を紹介し、論理的思考の基本などをご紹介しました。

しかし、今、論理的思考を身に着けて自分の武器とすることは二つの大きな壁にぶつかっているのです。

一つ目は、論理的思考のコモディティ化です。

昨今、論理的思考に関する様々な本があふれています。戦略コンサルのマッキンゼーやBCGが、MBAに関するグロービスが様々な解説書を書いています。

当然知る必要がある知識であることには変わりありませんが、社会の一部の人のスキルであった論理的思考は差別化の要素としては弱くなってきているということが挙げられます。

二つ目は、論理的思考で解決できる限界です。

知っての通り今は社会変化がとてつもなく速い時代です。それに伴い意思決定にも早さが求められるとともに不確実な選択を求められることになります。

そのため、論理的に最終的な結論まで出していたのでは時間がかかりすぎてしまったり、論理的にはっきり白黒つけられない状況に陥ることが増えてきているのです。

「真・善・美」の三要素のうち、真を追い求めるだけでは価値を提供できなくなってきているのです。

 

○「美意識」の価値

論理的思考が限界を迎えている今必要になってくるのが「美意識」です。

つまり、論理的思考の壁を乗り越えるためのスキルが「美意識」なのです。

論理的に考えても白黒はっきりつかないときに、こっちの方が美しいから選択することによって判断を効率化かつ効果的に行う必要があるのです。

なぜその判断の基準に用いるのが「美意識」であるかというと、美しいものには合理的に美しい理由があるだろうと考えられているからです。

将棋の羽生善治先生も判断の際に「美意識」を用いると羽生先生の著書の中でおっしゃっていました。

「真」で対処できないものに対しては「美」で対処するというのは、どんなものに対しても適応可能なのでしょう。それがついにビジネスへと広がってきたのが現在であるということなのですね。

先日紹介させていただいた「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」の中のA:appleを考えてみると、スマートフォンにシンプルで美しいという「美意識」を導入することで、appleというブランドを築いたことを鑑みると、世界の最先端企業ではもう「美意識」が当たり前のことなのかもしれません。

 

○「美意識」を鍛えるには

「美意識」を鍛えるためには、「アート」を見て考えることが必要になります。

絵画を見てなぜこの絵が美しいと思われているのかについて思いをはせるのです。

それにより、「美しい」の背景にある判断基準を自分の中で作ることができます。

そのため、論理的思考では判断がつかない問題に遭遇することが多い世界のエリートが、美術館に行き絵画といった「アート」を見て学ぶようになってきているのです。

日本の大企業は判断が遅いといった欠点がよく挙げられることから、これから日本で必要になっていく学習であると感じました。

 

 

今回は、論理的思考の先で必要になると考えられれている「美意識」に関してご紹介しました。

個人的には、美の前に思想を理解する必要がある、また、日本人は日本の美を改めて学ぶべきなのではないかと思っていますが、それに関してはまたご紹介したいと思います。

「美意識」もこれからの社会を生き抜くために必要なスキル(といっていいのかはわかりませんが)だと思うので、ぜひ知っておくべきだと思います!