通学読書

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【書評】 「経済史」 小野塚知二 (有斐閣) Part2

今回も前回に引き続き、小野塚知二「経済史」(有斐閣)をご紹介します。

 

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前回は、人間が持つ特殊な欲望「際限のない欲望」が経済成長の根底にはあることをご紹介しました。

経済の見方はいろいろありますが、人間の特殊性にその起源を見出しているのは大変興味深いのではないかと思います!人間という種だけがこのような経済を築きあげていることを考えると示唆されていることの合理性を感じます。

 

今回は、「前近代、近世」ではどのように経済を形成していたかを見ていきたいと思います。

 

【概要 part2

・人個体の欲望を統制し共同性を維持することで、充足を目指した前近代社会

市場経済と資本主義が形成された近世

・前近代、近世初期は生きている間で成長を実感できるかどうかの成長率

 

○前近代社会の経済

前近代社会の「際限のない欲望」を充足するための方法は、社会の共同性を維持し効率性を追求することでした。

そのために人間関係として身分制を採用していました。今も学生といった身分は存在しますが、この時期の身分とは人間関係全てに適用され、また変更されることがない決まり事でした。今だったらものすごく生きにくいですね笑

そして前近代社会は成長等を非道徳として剰余を処分する方法を持っていました。方法は共同体ごとで異なっておりましたが、これが持続的かつ停滞的な前近代社会を特徴づけていたのです。

 

○近世の経済

「際限のない欲望」が社会的に規制されていた前近代から、近世では「際限のない欲望」があらゆる個人に解放されていきます

それにより前近代社会では身分が変更できない身分制が取られていましたが、近世では身分を超えて人間関係を持つことが出来るようになりました。そして非農業人口が増大し、商業が拡大したことで近世の社会制度が形成されていきました。

これらが完全に確立されたのが近代となるため、近世とは前近代的な社会と近代の要素が共存している社会になります。移行する期間が400年程度あったと思うと驚きですね。考えてみれば今も身分というような概念が形を変えながら残っているかと思うと、もしかするとまだ移行期間であるのではないかと思うこともあります。

 

○経済の成長率

前近代、近世初期の経済の成長率というのは、今と比較すると実感できないくらい低いものでした。

西暦1年から1000年の千年間で世界全体のGDP14.2%増加します。現在の中国の一年の成長率が6%超えているというのを勘案すると驚くべき数字かと思います。また、個人で言うとほとんど変化しません!

100年あたりでは1.3%なので生きていて全くと言っていいほど変化を感じない社会です。

そして、1000年からの500年で二倍に成長しました。これで生きている間にかろうじて成長を感じられる水準になります。16世紀は33%の成長率ということで欲望が解放されたことで、大きな経済成長につながったことが確認されます。

このような数字を見ると現代の経済成長というのは信じられない水準である理解できますね。

 

 

個人の際限のない欲望が統制されていた前近代から解放され始め社会の制度が変わり始めた近世を見てきました。

現代にも前近代や近世の名残があるかと思うと、今もこの時期の社会変化の移行時期なのではないかと感じますね。

次回は近代、現代を見ていきたいと思います!