【書評】 「経済史」 小野塚知二 (有斐閣) Part1
経済史 Part1
今回ご紹介するのは、小野塚知二「経済史」(有斐閣)になります。
東京大学大学院経済学研究科の小野塚教授が執筆されている経済史の入門書になります。
経済史を学んでいる友達に入門書的なのを貸してほしいとお願いして借りましたが、本格的で難しいです!笑
【概要 part1】
・経済成長の背景には「際限のない欲望」という人間の特殊な欲望の在り方が存在する
・貨幣とは他とは違い「過剰充足」の心配がない
・経済とは人の「際限のない欲望」を充足する全過程である
○経済成長と際限のない欲望
経済成長という言葉があるように、経済は成長するモノです。私たちは経済成長を一般的にどう認識しているかというと、量的な枠組みが拡張していくことで成長していると捉えています。
ではなぜ量的な拡張を経済の成長と捉えてきたかというと、人間が「際限のない欲望」を持っている特殊な生物であるからなのです。
目の前においしそうなものがあると、苦しくなるまで食べてしまいますよね。このように人間の欲望とは過剰充足の可能性があり、これこそが人間の欲望の特徴である際限のない欲望となります。
○貨幣の持つ特殊性
貨幣はなぜこの世界の価値判断の基準となったのでしょう。
それは貨幣には「過剰充足の不安がない」からです。
さきほども例に出したように、食料などは食べすぎという「過剰充足」に陥る可能性があります。しかし、貨幣はいくら持っていても困りません(財布に硬貨として入れていたら重すぎるという問題は起きるかもしれませんが笑)。
そのため、経済が急成長するためには「際限のない欲望」の対象となる貨幣の存在が大きく関与しているのです。
○際限のない欲望を充足する方法
人間特有の欲望を満たす方法を、抽象的、社会的、現実的の三つのレベルに分けて考えます。
抽象的な欲望充足の方法としては、領有、蓄積、生産、消費が挙げられます。要は一人しか人間がいなかった時に欲望を充足させるための方法と考えていただけるとよいかと思います。
次に社会的な方法としては、所有と交換になります。これは自分たちが欲しいものを手に入れる、持っておくということなので想像しやすいですね。
最後に現実的な方法としては、分業です。際限のない欲望を満たすためには、効率性が求められるので、実社会では分業する必要が出てくるのです。
今回は、経済史全体を捉える上で必要となる知識を紹介しました。
次回からは、各年代に分けて経済はいかに存在していたのかを見ていきます。