通学読書

理系大学院生が読んだ本の感想や気になったことを書きます。(twitter:@booktrain8807)

【書評】 「経済史」 小野塚知二 (有斐閣) Part2

今回も前回に引き続き、小野塚知二「経済史」(有斐閣)をご紹介します。

 

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前回は、人間が持つ特殊な欲望「際限のない欲望」が経済成長の根底にはあることをご紹介しました。

経済の見方はいろいろありますが、人間の特殊性にその起源を見出しているのは大変興味深いのではないかと思います!人間という種だけがこのような経済を築きあげていることを考えると示唆されていることの合理性を感じます。

 

今回は、「前近代、近世」ではどのように経済を形成していたかを見ていきたいと思います。

 

【概要 part2

・人個体の欲望を統制し共同性を維持することで、充足を目指した前近代社会

市場経済と資本主義が形成された近世

・前近代、近世初期は生きている間で成長を実感できるかどうかの成長率

 

○前近代社会の経済

前近代社会の「際限のない欲望」を充足するための方法は、社会の共同性を維持し効率性を追求することでした。

そのために人間関係として身分制を採用していました。今も学生といった身分は存在しますが、この時期の身分とは人間関係全てに適用され、また変更されることがない決まり事でした。今だったらものすごく生きにくいですね笑

そして前近代社会は成長等を非道徳として剰余を処分する方法を持っていました。方法は共同体ごとで異なっておりましたが、これが持続的かつ停滞的な前近代社会を特徴づけていたのです。

 

○近世の経済

「際限のない欲望」が社会的に規制されていた前近代から、近世では「際限のない欲望」があらゆる個人に解放されていきます

それにより前近代社会では身分が変更できない身分制が取られていましたが、近世では身分を超えて人間関係を持つことが出来るようになりました。そして非農業人口が増大し、商業が拡大したことで近世の社会制度が形成されていきました。

これらが完全に確立されたのが近代となるため、近世とは前近代的な社会と近代の要素が共存している社会になります。移行する期間が400年程度あったと思うと驚きですね。考えてみれば今も身分というような概念が形を変えながら残っているかと思うと、もしかするとまだ移行期間であるのではないかと思うこともあります。

 

○経済の成長率

前近代、近世初期の経済の成長率というのは、今と比較すると実感できないくらい低いものでした。

西暦1年から1000年の千年間で世界全体のGDP14.2%増加します。現在の中国の一年の成長率が6%超えているというのを勘案すると驚くべき数字かと思います。また、個人で言うとほとんど変化しません!

100年あたりでは1.3%なので生きていて全くと言っていいほど変化を感じない社会です。

そして、1000年からの500年で二倍に成長しました。これで生きている間にかろうじて成長を感じられる水準になります。16世紀は33%の成長率ということで欲望が解放されたことで、大きな経済成長につながったことが確認されます。

このような数字を見ると現代の経済成長というのは信じられない水準である理解できますね。

 

 

個人の際限のない欲望が統制されていた前近代から解放され始め社会の制度が変わり始めた近世を見てきました。

現代にも前近代や近世の名残があるかと思うと、今もこの時期の社会変化の移行時期なのではないかと感じますね。

次回は近代、現代を見ていきたいと思います!

【書評】 「経済史」 小野塚知二 (有斐閣) Part1

経済史 Part1

 

今回ご紹介するのは、小野塚知二「経済史」(有斐閣)になります。

 

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東京大学大学院経済学研究科の小野塚教授が執筆されている経済史の入門書になります。

経済史を学んでいる友達に入門書的なのを貸してほしいとお願いして借りましたが、本格的で難しいです!笑

 

【概要 part1

・経済成長の背景には「際限のない欲望」という人間の特殊な欲望の在り方が存在する

・貨幣とは他とは違い「過剰充足」の心配がない

・経済とは人の「際限のない欲望」を充足する全過程である

 

○経済成長と際限のない欲望

経済成長という言葉があるように、経済は成長するモノです。私たちは経済成長を一般的にどう認識しているかというと、量的な枠組みが拡張していくことで成長していると捉えています

ではなぜ量的な拡張を経済の成長と捉えてきたかというと、人間が「際限のない欲望」を持っている特殊な生物であるからなのです。

目の前においしそうなものがあると、苦しくなるまで食べてしまいますよね。このように人間の欲望とは過剰充足の可能性があり、これこそが人間の欲望の特徴である際限のない欲望となります。

 

○貨幣の持つ特殊性

貨幣はなぜこの世界の価値判断の基準となったのでしょう。

それは貨幣には「過剰充足の不安がない」からです。

さきほども例に出したように、食料などは食べすぎという「過剰充足」に陥る可能性があります。しかし、貨幣はいくら持っていても困りません(財布に硬貨として入れていたら重すぎるという問題は起きるかもしれませんが笑)。

そのため、経済が急成長するためには「際限のない欲望」の対象となる貨幣の存在が大きく関与しているのです。

 

○際限のない欲望を充足する方法

人間特有の欲望を満たす方法を、抽象的、社会的、現実的の三つのレベルに分けて考えます。

抽象的な欲望充足の方法としては、領有、蓄積、生産、消費が挙げられます。要は一人しか人間がいなかった時に欲望を充足させるための方法と考えていただけるとよいかと思います。

次に社会的な方法としては、所有と交換になります。これは自分たちが欲しいものを手に入れる、持っておくということなので想像しやすいですね。

最後に現実的な方法としては、分業です。際限のない欲望を満たすためには、効率性が求められるので、実社会では分業する必要が出てくるのです。

 

 

今回は、経済史全体を捉える上で必要となる知識を紹介しました。

次回からは、各年代に分けて経済はいかに存在していたのかを見ていきます。

 

教養とは?

こんばんは。

最近、「教養としての」ということを紹介していましたが、そもそも教養っていうのが難しいですよね。

 

一般的には、歴史、絵画、音楽などが教養という認識である気がします。

しかし、一つだけ主張したいことがあります!笑

数学とか物理とかって教養にはならないのでしょうか!?笑

 

高校生の頃にベクトルとか学んだことありませんか?

ベクトルの面白さとかってあるような気がするんです笑

ベクトルって二次元空間を直行空間だけではなく、一次独立(ベクトルの用語です笑)な二つのベクトルであれば、どうとっても二次元空間を表現できることが面白いと勝手に思ってます笑(あくまで個人の意見です)

 

そういうのを学ぶのも教養にならないのかと母親に言ったら、「馬鹿じゃないの」と言われました笑

 

理系の教養がわかる人いたら教えてください!!笑

「テクノロジー」を学ぶとは?

こんばんは。

昨日「教養としてのテクノロジーという本をご紹介しました!

 

ところで「テクノロジー」を理解するとはどういうことなのでしょうか?

僕は、「そのテクノロジーの活用場面をイメージする」ことだと思っています。

 

最近新しいテクノロジーがドンドン登場してきてますよね…

AI、ブロックチェーン、ドローン etc

ドローンなんかはイメージしやすいですが、AIとかってやはりイメージしにくい気がします。

 

そこで専門家でない自分たちが意識することは、活用場面を思い描くことなのではないかと思っています。

そして、イメージが湧いたら自分なりの活用方法を想像してみるとテクノロジーに対する親近感が湧くのだと思います!

 

理系のテクノロジーに対する一つの解釈を書いてみました!

【書評】 「教養としてのテクノロジー」 伊藤穣一 (NHK出版新書)

今回紹介する本は、伊藤穣一「教養としてのテクノロジー(NHK出版新書)です!

MITメディアラボの所長である著者が、テクノロジーの未来や教育、日本人はどう変わるべきかを論じてくださっている本になります。

 

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【概要】

・テクノロジーを「フィロソフィー」として理解することが不可欠になってきた

・「ミーニングオブライフ」がより重要になってくる

・技術を用いる際の倫理が必要

 

○「フィロソフィー」としてのテクノロジー

本書では、AI、仮想通貨、ブロックチェーンといったテクノロジーを紹介していますが、知っての通りテクノロジーが世界を変える時代になりました。

だからこそテクノロジーの背景にある「フィロソフィー」を理解すること社会の変化に対応するためには必要不可欠になってきたのです。

今や「テクノロジー」は理系や文系といったことに関係なく経済や歴史と同様に「教養」という位置づけであるということです。

 

○テクノロジーが変える「ミーニングオブライフ」

これに関しては先日紹介した「WORK SHIFT」とほとんど同じです。

テクノロジーの進歩により変化した世界には共通の「ミーニングオブライフ」が失われていきます。

<働く>を通して社会課題解決を行い楽しむといった「ミーニングオブライフ」を考え続けることが必要になります。

もしよろしければ、「WORK SHIFT」の紹介を読んでみてください!

 

○技術利用の倫理

テクノロジーの利用の仕方次第では、人間を圧迫する方向に進む可能性もあります。

AIや仮想通貨といった技術がどのように世界を変えるかは、今現在は人間の意思決定によります

だからこそ「倫理観」が技術利用の際に必要になります。

しかし、世界の変化の最先端にいる僕らはまだ「倫理観」を醸成していません。

これから私たちが作らないといけないのです。

 

【総括】

テクノロジーも常に形を変えています。

理系が社会を理解すると共に文系がテクノロジーを教養として知ることが必要になるのではないでしょうか。

本著にもありますが、テクノロジーを楽しめる日本人が世界の最先端を走れるといいですね。

 

化学は人の話をどうするのか

「化学はもっと人の話をするべきだ。」

 

このフレーズのCM、最近ご覧になったことありませんか?

そうです、帝人さんのCMです!

 

最近、このCMの言葉が胸に刺さることが多くあります。

化学というのは果たして人の話をする気があるのか。

考えてしまうことが多いです。

 

研究室のような閉鎖的な空間にいてどうやって人の話をするのだろうか。

働き方の変革がこれを問い直すきっかけになって欲しいと思ったCMでした。

 

 

 

 

 

将来を考えるということ

今日は「WORK SHIFT」を読んで就活中に考えていたことを簡単に書いてみたいと思います。

 

①未来を考えることの難しさ

将来的に何が残るのかを予測するのがとても難しいというのが一つ目です。

テクノロジーの進化やグローバル化は本にもあった通り想像を超える速度で進んでいるのでしょう(社会にまだ出ていないのでわからない点もありますが笑)。

 

だからこそ、「メガトレンド」を知る努力をしないといけないのではないのでしょうか。

細かい予測は出来なくても社会が向かう行き先の大まかな検討は行うべきであると考えていました。

 

②延長線上のキャリアを描くのか

これは特に理系の院生には多いことだとは思います。

果たしてこれまでの人生で学んできた延長線上に進む選択肢だけを持って将来を考えるべきなのかということです。

外の世界を知るきっかけとしての就活や大学生活というあり方が今後問われ、学び続けるモチベーションを与え、学び方を教えてくれる機会に出来たらいいのではないかでしょうか。

 

 

勝手な感想ですが、これらを考えるきっかけとして読書というのは一つの手段であり、広がってくれればいいなと思いました!